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日本維新の会代表の松井大阪市長らの公務軽視について

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 10月26日、大阪市長と府知事が公務〔をすべきと多くの住民が思うであろう〕時間に他府県にまで足を伸ばして選挙活動をしていることについて批判のツイートをしたところ、松井大阪市長からこのようなお返事を頂戴いたしました。しかしこれは、国政と地方自治の制度の差を理解していない、開き直りというべきものです。この件について、私の意見を述べておこうと思います。

 まず松井大阪市長がおっしゃるように、特別職の公務員は一般職の公務員が通常そうであるのとは異なり、「公務時間」なるものが定められてはいません。これは私の側の言葉足らずです、失礼いたしました。

 しかしながら、市長、府知事は総理大臣とは決して同列に語ることができず、市長、府知事が「公務より選挙活動を優先している」現状がモラルとして問題があるとの認識については、特に改めることはございません。

  • 首長(市長・知事)は総理大臣とは違う

 上掲のツイートで、松井大阪市長は「岸田総理も行政のトップでありながら選挙活動をしている」として、総理大臣の選挙活動を容認するなら首長の選挙活動も容認すべきとの論を示しておられます。しかし実は、総理大臣と市長や知事などの首長では、その立場の基盤となる制度的性質が全く異なりますので、同列に扱うことができないのです。そのことを説明したいと思います。

 総理大臣を行政の長として擁する国政は「議院内閣制」であり、市長・知事を行政の長として擁する地方自治は「二元代表制」です。

 まず議院内閣制のもとでは、行政の長である総理大臣は、立法府の一員である国会議員から指名されます。それゆえ岸田総理は、総理大臣であると同時に国会議員、衆議院議員でもあるのです。なので、衆議院議員総選挙の期間中に選挙活動を行うことが認められる立場です。

 議院内閣制のもとでは、総理大臣は自分自身も選挙の候補者である以上、どうしても選挙活動と公務とが重なります。これは制度上、仕方がないことでもあります。(ちなみに岸田氏は選挙活動の忙しい合間にも公務をなさっています。参照:「新しい資本主義実現会議」が初会合、具体化に向けた議論開始 / ロイター編集

 一方で、大阪市長・府知事は、二元代表制のもとで行政の長として市民から選出された存在です。二元代表制では、市長・知事は立法府たる議会からは独立しているので、議会の選挙とは関係なく、行政に専念できる職位なのです。なお、市長選や知事選が行われ市長や知事自身が選挙活動などで不在になる場合には、副市長や副知事がその職務を代理することが、地方自治法第152条第1項にて定められています。

 つまり議院内閣制という制度上、選挙活動と公務が重なることを余儀なくされる総理大臣と、本来は公務に専念が可能な市長・知事とではまるで立場が違うということです。この二者を同一視することには、無理があります。両者の制度的違いを理解できていないのでしょうか。岸田総理と松井市長・吉村知事とでは、おかれた立場が全く異なります。

  • 大阪の公務はないがしろにされている

  大阪市長の日程府知事の日程は、いずれも市役所・府庁のホームページに記載されています。これによりますと、松井市長は10/18(月)から10/26(火)の間、登庁したのは10/21(木)の4時間程度です(10/27閲覧)。

 10/27、私とのやりとりについて松井市長が囲み会見にて問われる場面がありました。そこで松井市長は、「公務に支障はない」と記者の方に答えておられます。以下、会見動画を上げておられる方のツイートリンクと文字起こしです。

記者「候補者とのやりとりがあって。公務については大丈夫かってようなことでご議論あったと思うのですが、公務に支障は無いということでしょうか」
松井市長「支障出てるか?」
記者「いや、わからないですけど…」
松井市長「いやいや、出たら君んとこ絶対書くやん。まだ毎日の記事にそんなん出てないけど。君らチェックしてるんやろ?特に毎日はもう完全にチェックしてるよね?僕がここに居なくて大阪市政が停滞してる?」
記者「いや、聞いてるんですけど…」
松井市長「いや違うやん。チェックしてるから分かるでしょ、停滞してるかどうか。」
記者「はは…」
松井市長「そら毎日新聞にこうもう僕が居ないことで、市政が停滞し、市民のサービスが滞るようなことになってるんなら、うん、これは毎日新聞徹底批判書くんでしょ?」
記者「出てないってことでよろしいでしょうか?」
松井市長「だからそれ出てないから君んとこ書いてないんじゃないん?」
記者「はは…」
松井市長「それともう一つ間違ってるけど、やりとりはしてませんから」
記者「あ、やりとりはしてないと…」
松井市長「相手が一方的に批判するから、違うでしょ、ということを伝えたんです」

 

 松井市長は「大阪市の市民サービスは滞っていない、多少公務から離れても市政に支障や停滞はない」とおっしゃっているように見受けられます。しかし、市民サービスが滞っていなくとも、大阪市の行政課題を見つけそれに取り組むという仕事はいくらでもあるはずです。「やることがない」なんてことはありえません。要するに、行政課題に取り組むべき市長の役目、すなわち「公務」が、日本維新の会の選挙運動という「党務」のために後回しにされているのです。

 公務をしないこの間にも、大阪市長には高額の月額報酬が支払われています。これで、松井市長が代表を務める日本維新の会が謳っている「身を切る改革」と言えるのでしょうか。大阪市民は選挙活動のために市長に高額の報酬を出しているのではありません。

 

  • そもそも大阪府市政の停滞は起こっている 

 緊急事態宣言に伴う感染防止措置への協力金の申請が、大阪府は他府県より遅れています。

○ 大阪府 第9期 飲食店等に対する営業時間短縮等協力金
https://www.pref.osaka.lg.jp/kyouryokukin/kyoryokukin-9ki/index.html

○ 東京都 「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金(10/1〜10/24実施分)」について
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/attention/2021/0930_15138.html

 東京、神奈川の申請開始は10月25日、兵庫は10月28日に申請開始、それに対して大阪は11月1日申請開始となっています。これまでも、大阪における協力金が遅れていることがたびたび報道されてきましたが、またもや後れを取っている格好です。

 上記の府サイトに「※この協力金は、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用した事業です。」とあるように、これは国が財源措置をして実施している国民救済策です。私も国政に携わってきた者として、自治体にはしっかりやってもらわなくては困ります。

 

  • 「大阪市は大きく1人の市長では見きれないだから都構想」という過去の発言との矛盾 

 橋下市長から松井市長まで、大阪市を廃止し特別区に分割するいわゆる「大阪都構想」を推進する理由として「大阪市は大きすぎて1人の市長では見ることができない」と繰り返しおっしゃってきたはずです。

 ならば大阪市長の公務はぎっしりと入り、日々お忙しく働いてなければならないはずですが、実際には「公務日程なし」の日だらけです。これは完全に矛盾しています。これまで二回にも及んだ住民投票での有権者へのアピールはなんだったのでしょうか。「大阪市長1人では大阪市は見きれない」というこれまでの話が都構想のアピール用の嘘なのか、あるいは松井市長が市民生活を軽視して本来は忙しいはずの業務をないがしろにしているのか、いずれでしょうか。いずれにしても著しくモラルが欠けています。

 

  • モラルは政治家の本質

 もちろん、首長が公務をサボタージュすることは、法律上特に問題があるわけではありません。ですので、これはあくまでモラルの問題です。そして私は、市民から信任を受けた首長が自身の政党の選挙活動にかまけて公務を滞らせている現状を、モラルとして問題があると感じております。

 松井市長はこの問題を重箱のすみをつつく批判とおっしゃっていますが、本当にそうでしょうか。モラルは政治家の本質です。そしてモラルが欠如した政治家が代表をつとめるとなれば、これは政党の問題でもあります。

 私は、大阪と日本を良くしたいと日々、訴えております。日本を素晴らしい国にする、そのための貢献をしたいと心から思っています。だからこそ、「法律に定められてないから何をやってもいいだろう」という倫理観とは決して相入れません。

 どうか松井市長におかれましては、ご自身の置かれた職責をご自覚いただきたいと思います。松井市長は、政党の代表である前に、大阪市民に選ばれた市長なのです。ご自身に託された市民の思いを大切にしてくださることを願います。

ブログ筆者プロフィール

ブログ筆者プロフィール

前衆議院議員 左藤 章

現在、自民党幹事長代理。防衛副大臣兼内閣府副大臣、衆議院安全保障委員長、衆議院文部科学委員長等を歴任。情報通信、防衛、教育、司法など多岐にわたる分野で活動中。