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<2015年05月02日>私がいわゆる「大阪都構想」を反対する訳

来る5月17日(日)、大阪市を廃止・五分割するいわゆる大阪都構想(大阪市における特別区の設置について)の是非につき、住民投票が行われます。現在も期日前投票ができます。
 
 ご存じのとおり、私たち自民党は、大阪市を廃止・五分割し特別区を設置するこの大阪都構想に、反対しております。メリットが全くなく、不透明な点や財源等をはじめとする懸念事項があまりにも多すぎるためです。二重行政は平成26年の通常国会で改正された地方自治法で解消されます。知事・市長・議員代表者での協議にて、府から市へ移譲することができるようになりました。自民党が提案してきた「大阪戦略調整会議(通称:大阪会議)」がそうです。明日にも移譲し、二重行政は解消できるのです。さらに4月に衆議院本会議で提出された地方創生での「第5次地方分権一括法案」において道府県から政令市に移譲される学校教育法などの5法案があります。多額の税金を投資せずとも、解決できる問題なのです。
 なかには「議員は自分たちの立場を守りたいから反対するんや」と言われる方もいますが、それは違います。この大阪都構想は、内実の伴わない構想です。特別区が設置されることになれば、その不利益は議員ではなく大阪市民が被ることになります。党がどうの、議員がどうのと言っている場合ではありません。「よくわからない」「なんとなくイメージ的に賛成なんやけど…」となんだか不安に感じる市民が多いかと思います。どうか見えづらい「真実」にご注目ください。長い文ですが、考える糧にしていただければと存じます。

 まずは、大阪市をなくし、特別区が設置されるとどうなるかの話をいたします。

①特別区では権限が格段に低下。
 現在、政令指定都市である大阪市には府の権限の約90%が移譲されています。なので、大阪市は府を通さずに、直接国に予算等の要望ができています。それが特別区になると全て大阪府を介して行っていくことになります。大阪府のさじ加減できまってしまいます。

②財源の低下。税収が現在の16%のみに。
 現在、政令指定都市である大阪市の税目は8項目ですが、特別区になると3項目しかもらえません。約6,419億円ある現税収は、特別区になると約1,689億円になり、残りの4,730億円は大阪府に吸い上げられます。税収は73.69%も減ります。
また、各特別区の財源は府知事が決定することなので、財源を巡って区長同士で奪い合いになることも予想されます。

③行政サービスの悪化。
 上記で述べた通り、権限も財源も低下するので、市民への行政サービスは改善するどころか悪化するのは目に見えています。結局のところ、お金がなければ一定の行政サービスは提供できないのです。
将来、府・区の財政が厳しくなれば、公営住宅の廃止や生活に密着した生涯学習や区民祭りなどの行事がなくなる可能性もあります。他にも、敬老バス廃止、水道料金の値上げ、保育料の値上げ、国民健康保険・介護健康保険の値上げ、学校給食費の値上げ…等が予想されます。
 また、今までの区がなくなり、区役所・出張所もなくなります。支所では窓口業務のみになり、大事な相談は特別区役所にて。そうすると、住んでいる場所によっては、特別区役所へは遠く行きづらくなる市民も多数でてくるでしょう。
24区あったコミュニティが5区に集約することで、きめ細やかな行政や地域支援は手薄となります。住民から近くなるどころか遠くなる行政サービスが誕生してしまいます。

④二重行政は昔の話。特別区設置により三重行政に。
 勘違いしてはいけないのは、二重行政による「お金のムダ」の例に「りんくうゲートタワービル」や「WTC」などをあげられますが、これらの失敗は二重行政のせいではありません。バブル的な発想のもと建設した府政・市政それぞれの問題です。
この都構想の見本になっている東京都には、23区の調整機関として都と区の間に「一部事務組合」があります。今回の都構想も同じです。①で特別区は大阪府を介して予算等の要望をしていくと言いましたが、実はその間に「一部事務組合」で調整してもらわないといけませんので、「特別区」→「一部事務組合」→「大阪府」の三重行政となります。決められない行政、たらい回しの行政になっていってしまいます。これでは、地方分権ではなく、大阪府の中央集権が強くなるだけなのです。
 また、国は地方分権を目指して、5都市あった政令市を20都市に増やしました。このままでは大阪市という政令市を失った大阪だけが逆行してしまいます。

⑤1億円の経費削減に600億円を投資。更なる赤字が。
 当初、橋下市長は、大阪府と大阪市の統合効果で毎年4,000億円の経費削減ができると言われていましたが、大阪市によると実際にはたったの1億円しかできません。逆に特別区が設置されると区議会庁舎などの建設等、再編にかかるコストが600億円以上にものぼります。特別区設置から5年間で1,071億円の収支不足になり、平成45年までの累計赤字は226億円になるのです。知事・市長・議員代表者による協議にて解消される問題に、ここまでの多額の税金を投資し負債をおう必要はありません。

⑥職員数の増加。
 新たな行政システムをつくるため、区別の教育委員会をはじめとする様々な部署をつくらなければなりません。必然的に職員の数も増え、人件費が増額します。また、それだけはなく、それぞれの部署の専門家を各区に配置しなくてはなりません。その人材数にも実際に足りるのか疑問を感じます。
実は、東京23区内の区長22名は、この都の制度を変えたい、又はやめたいと言っています。税収がほとんど都に吸収されているのに、多数の議員・職員への多額の人件費など、非効率な点が問題視されています。多額の税金をかけ特別区を設置しても、財源は減り、今以上の支出は更なる赤字をうむだけです。

⑦住所変更による住民の手間と費用。
 免許証や年金手帳など役所関係の書類の変更手続きは、もちろん役所が行います。しかし、それ以外は自分たちでしなければなりません。例えば、企業・団体などで管理している名簿・商用封筒・名刺・ハンコなどの変更。その費用はもちろん自己負担です。

 まだまだ懸念される事項はありますが、大きく述べると上記の通りです。この都構想が本当に良い案であれば、他の道府県でも同じ動きがあってしかるべきです。しかし、そのような動きはありません

 また、特別区設置による経済効果はありません。大阪再生と行政制度の変更は全くの別問題です。関係ありません。現に大阪市は景気の落ち方が最悪で、2011年の統計では全国で最低です。維新府政になった2008年以降のへこみ方が一番激しいのです。それは企業がどんどん転出しているからです。ここ10年間、大阪府では転入より転出のほうが多くなっています。移転先(2011年)は、東京が33%、兵庫県32%、京都府8.9%、奈良県8.9%と続き、近畿地区への移転が54.1%を占めています。企業家からみたら大阪は魅力がないということです。それには、「大阪府」「大阪市」「堺市」をはじめとする「オール大阪」での成長戦略が今一番大切なのです。

 先日、維新のホームページの「構想のデマ」と記し、反対派のデマに対しての「正解」なるものの掲載を見、その内容があまりにデタラメで愕然としました。
 例えば、住所が「大阪都△△区…」となると掲載がありますが、実際には「大阪府△△区…」です。大阪府は大阪都にはなれません。それには法改正が必要です。
 また、同ページには「法律上では、地方自治法第281条の4の規定により、(中略)特別区を市に戻すことや、政令指定都市となることは可能です。」と記されていますが、地方自治法第281条の4の規定には、特別区になった際の特別区の境界変更の手続き等しか記載されておりません。現状では特別区を市に、ましてや政令指定都市に戻す手続きはありません。つまり後戻りできないのです。後悔してもその時すでに遅し、元に戻せないのです。

 何かをはじめるとき、それには必ずメリットとデメリットがあります。目先の美味しいところばかりを見て、「不都合」を見ず、その対策を考えずに突進していくのは失敗のもととなります。自分たちの「不都合」を「ウソ」で塗り固めていっては、市民にとって何が本当で何がウソなのか見えづらくなります。
 「改革」に反対なのではありません。改善すべきところはしていかなくてはなりません。私たち自民党は、市民に「不利益な構想」に反対なのです。今一度、私たちが反対せざる得ない理由をご理解いただき、「反対」を入れに投票所へ足を運んでいただきますようお願い申し上げます。

ブログ筆者プロフィール

ブログ筆者プロフィール

前衆議院議員 左藤 章

現在、自民党幹事長代理。防衛副大臣兼内閣府副大臣、衆議院安全保障委員長、衆議院文部科学委員長等を歴任。情報通信、防衛、教育、司法など多岐にわたる分野で活動中。